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第4回 食品薬学シンポジウム

第4回 食品薬学シンポジウム

発酵タヒボの化学的および生物学的評価
■2011年10月28日~29日 東京都
「Chemical and Biological Evaluation of Fermented Taheebo」
Kazunori Ueda, Chie Yamashima and Akira Iida (Faculty of Agriculture, Kinki University), Harukuni Tokuda (Graduate School of Medical Science, Kanazawa University), Masafumi Kaneko (Faculty of Pharmacy, Takasaki University of Health and Welfare)
Brazilian medicinal plant Tabebuia avellanedae known in folk medicine as Taheebo is used in North and South America for many years as an anticancer, antifungal, antibacterial and anti-inflammatory drug. Recently, we have prepared fermented Taheebo by treating Taheebo with several microorganisms including Lactobacillus and have evaluated its biological activity including cancer chemopreventive, antiproliferative, and anti-inflammatory activities.
Keywords: Tabebuia avellanedae, fermentation, anticancer effect, cancer c hemoprevention, anti-inflammatory effect
ブラジル原産薬用薬物タヒボ(Tabebuia avellanedea)は、北米ならび に南米において、長年にわたり、がんや炎症あるいは真菌や細菌に対して 抑制効果のある民間薬とし利用されてきた。一方、われわれは,本植物の がん予防効果1), 2)やがん細胞に対する細胞増殖抑制活性3), 4)ならびに抗 炎症効果について長年検証を加え,本植物の食品としての機能と有効性 を明らかにしてきた。われわれは,それらをさらに向上させ、本植物に由来す る食品の付加価値を高めるために発酵に着目した。発酵は,食品自体が本 来持つ有効性や機能性を高めることができる、あるいは新たな機能を付加 することができる有効な手段である。したがって、本植物についても発酵に より何らかの有効性の変化が期待できると考えた。今回,本植物樹皮を乳 酸菌などで処理した、いわゆる発酵タヒボを作製し、その化学的、生物学的 評価を行った。
【方法】
・発酵
タヒボジャパンより供与されたタヒボ茶に繊維分解菌を加え、3日間60~70 ℃に加温した。次に、乳酸菌、酵母菌、麹菌で2週間、5℃の低温発酵を行い、 発酵タヒボを得た。
・マウス皮膚二段階発がん
本実験には、ICRマウスを用いた。マウス皮膚に発がん物質DMBA (100 μg) を塗布し、一週間後、発がんプロモーターTPA (1μg) を週2回、20週塗 布した(ポジティブコントロール)。一方,TPAの塗布前に抗発がんプロモータ ーとしての発酵タヒボ (50μg)あるいはタヒボ (50μg) を塗布することにより、 それらのがん予防効果を調べた。
・抗炎症活性
本活性試験は、動物と細胞を用いる2種類の実験系で行った。前者は、 化学炎症剤としてTPAを用いた。マウス耳に5μgのTPAを塗布する30分前 か、あるいは塗布した3分後に100μgの発酵タヒボあるいはタヒボを塗布して 生じた発赤の面積からそれらの抗炎症効果を評価した。一方、後者にはヒト 由来皮膚細胞CHP-4を用いた。細胞培養液を加温式スターラー上で80℃、 1分間加温し、その前後に1mgと0.1mgの発酵タヒボあるいはタヒボを培養 液に加えた。細胞障害により浮遊する細胞数を計測し、それらの抗炎症効 果を評価した。
【結果と考察】
・発酵
タヒボおよび発酵タヒボをそれぞれMeOHで抽出し、逆相HPLCで分析 すると、極性画分の溶出パターンに顕著な違いが認められた。一方、タヒボ の抗がん活性成分が含まれる非極性画分には大きな差は観察されなかった。
・マウス皮膚二段階発がん
ポジティブコントロールでは、10週目にすべてのマウスにパピローマが発生 した。一方、発酵タヒボとタヒボで処理したグループでは、すべてのマウスに パピローマが発生するのにそれぞれ、15週と14週を必要とした。また,マウス 一匹当たりに発生したパピローマ数を、発酵タヒボとタヒボで処理したグル ープで比較すると、発酵タヒボで処理したグループの方が有意な差でパピ ローマ数が少ないことが分かった。これらの結果は、がん予防効果に関して、 発酵タヒボはタヒボよりも優れていることを示している。がん予防効果に影 響を与える成分が含まれる画分に大きな差がないことはHPLC分析により 判明している。したがって、発酵により増加した成分あるいは新たに生成し た成分が、がん予防効果を高める、すなわち抗発がんプロモーターとして機 能していること、あるいは,タヒボに含まれる既存の抗発がんプロモーターの 活性を増強させていることが示唆された。
・抗炎症活性
マウスを用いた実験において、発酵タヒボとタヒボの塗布をTPA塗布前に 行った場合、いずれにも抗炎症効果は認められなかった。一方,発酵タヒボ とタヒボの塗布をTPA塗布後に行った場合、発酵タヒボには抗炎症活性が 認められたが、タヒボには認められなかった。
CHP-4細胞を用いた実験において、発酵タヒボとタヒボの添加を加熱前 に行った場合、発酵タヒボにはやや抗炎症効果は認められたが、タヒボには 抗炎症効果は認められなかった。一方、発酵タヒボとタヒボの添加を加熱 後に行った場合、いずれにも抗炎症効果は認められたが、その効果は発酵 タヒボの方が強かった。タヒボの真の抗炎症活性成分は,いまだ特定されて いないが、発酵により増加した成分あるいは新たに生成した成分に、がん 予防効果においてみられたように、抗炎症効果を高める,あるいはタヒボに 含まれる既存の抗炎症物質の活性を増強させていることが示唆された。
【結論】
発酵によりタヒボに本来含まれる有効成分の含量が増加する、あるいは 新しい有効成分が生成する可能性が示唆された。また、タヒボの機能性向 上に発酵が有効な手段であることも示された。
参考文献
1) Ueda, S., Tokuda H. Planta Med., 56, 669 (1990)
2) Ueda, S., Umemura, T., Dohguchi, K., Matsuzaki, T., Tokuda, H., Nishino, H., and Iwashima A. Phytochemistry, 36, 323 (1994)
3) Yamashita, M., Kaneko, M., Iida, A., Tokuda, H., and Nishimura, K. Bioorg. Med. Chem. Lett., 15, 6417 (2007)
4) Yamashita, M., Kaneko, M., Tokuda, H., Nishimura, K., Kumeda Y., and Iida, A. Bioorg. Med. Chem., 17, 6286 (2009)
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