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第9回 日本補完代替医療学会学術集会(ランチョンセミナー)

第9回 日本補完代替医療学会学術集会(ランチョンセミナー)

ブラジル産薬用植物タヒボの基礎および臨床応用に関する現状と展望
■2006年10月29日 大阪府・大阪市
「Current and future basic or pre-clinical approaches to Brazilian medicinal plant, Taheebo」
Harukuni Tokuda (Department of Biochemistry, Kyoto Prefectural University of Medicine), Akira Iida (Faculty of Pharmacy, Takasaki University of Health and Welfare)
Ⅰ.タヒボ(Tabebuia avellanedea, Bignoniaceae)の解説
 ブラジルを含む南米地域原産であり、数世紀以前より広範囲な地域に おいて、原住民の間で薬用植物として種々の疾患に使用されている、ノウ ゼンカズラ科のタベブイア・アベラネダエ[TA](タヒボジャパン社より試料提供) が有するその生理活性の効果を試験した。因みにTAと同属の樹木には 黄色の花を咲かせる種もあり、その花はブラジルの国花として広く知られ ている。
 現在、TAは貴重な木として現地では奇跡の薬木とされている。TAは かつてインカ帝国時代に「神からの恵みの木」と伝承されており、その効果 の作用も含めて、当時のインカ帝国では疫病の流行や悪性腫瘍の発生が 極めて少なく、その経緯がこの“もの”が薬用植物として現在まで、確実に 広く世界に、人類の間で推奨されてきたものと考えている。
 TAには殺菌力等があり、虫も寄り付かずカビも発生しないとされ、それが ゆえにかつての原住民の人々は、その内部樹皮を飲料の形態で使用して おり、現在われわれも基本的にその方法で使用し有効な効能を期待して いる。  今回はとくにわが国の医療現場で深刻な問題であり、法令でその対処 を開始しようとする発がんに対する作用を、in vitro と in vivo ならびに実際 に市販品を使用した、ヒトでの経過に関してもその可能性について検討した。
通常はその内部樹皮の微粉末を熱湯抽出液、または抽出液をスプレードライ 形にしたエキス末を、健常者またはがん患者等の罹患者が飲料として自由 摂取する形態である。このように普段使用されているTAエキス末のより 詳細なデータを提供する目的をも含めて、その検討として、この樹木の含有 化合物とその生理活性の有用性を追求する試験を進めた。
Ⅱ.Tabebuia avellanedeaの含有化合物
 これまでの報告では、有機化学の構造的にナフトキノンに属する化合物 であるLapacholが含有されており、その抗腫瘍活性が試験されてはいるが、 既存の抗腫瘍剤と同程度の活性しか示さないことから、現時点では米国 NCIでも保留ということになっている。
 このような状況で、演者らはより活性が強くかつ有用性の高い化合物を 検索した結果、現在のところ同様な構造を有する化合物として5-hydroxy- 2-(1-hydroxyethyl)-naphtho[2,3-b] furan-4,9-dioneを単離、構造決定し、 その生理活性を含めて数か国で特許を取得し、当化合物に関してその使用 形態である抽出物とともに検討した。加えて当化合物については合成が可能 となり、当薬用植物が含有する強い活性物質の一つとして、より詳細な検討 を進めている。
Ⅲ.TAエキス末のがん疾患への効果
 in vitro の試験系として、簡便で特異性が高く、主要な国際雑誌に数多く の報告がなされ、国際的にも認知されている試験法である試験管内短期 検出法(Epstein-Barr virus early antigen activation test、EBV-EA活性化 抑制試験)を用いて、TAエキス末をがん予防との観点から試験をしたところ、 これまで認知されているがん予防剤であるカロテノイド類と同程度、または それより強い抑制活性を示した。
 より広範囲な活性を目的として、ヒト由来がん細胞、正常細胞を用いた 細胞毒性試験を試みたところ、既存の抗腫瘍剤と同様に評価可能な効果 が得られた。この結果を基にin vivo の試験法としてがん予防剤の最も基礎 検討項目である、マウス皮膚二段階発がん抑制試験を試みたところ、試験 対象物であるパピローマの発現に対し、TAエキス末は発現の抑制、発現の 遅延効果が認められ、強い作用を示した。
 これらの成果は、これまでの伝承的な有用性の考察に、ヒト使用を含めた、 近代的科学的な作用解明に向けた可能性を示唆している。
Ⅳ.ヒトでの使用経験の例
 一例として、食道がんのケースで、食道上部に異常の感触時に、前述の TAエキス末のみを毎日服用した結果、内視鏡観察で徐々に異常と思われる 病巣箇所の縮小が認められ、現時点では同箇所での拡大の影響はなく、 この病巣での作用が強く示唆された。
 薬用、健康志向植物による、がん予防、治療機能性については今後ます ます重要視されることから、ここに示したような日常の生活の場で使用される “もの”の現実化への努力が早急に必要なことと考え、この分野における 今後の研究の展開を期待したい。
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