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第52回 日本癌学会総会②

第52回 日本癌学会総会②

培養ヒト癌細胞に対し高選択的毒性を有する植物成分
■1993年10月5日~7日 宮城県・仙台市
「Plant components possessing highly selective toxicity against cultured human cancer cells」
Shinichi Ueda
Department of Pharmacognosy, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University
【目的】
副作用のない抗癌剤を開発するため、癌細胞に対し高い選択的毒性を有する抗癌性物質の研究に多くの努力が払われている。我々は、ノウゼンカズラ科植物から抽出される成分について、培養ヒト癌細胞株と、初代培養正常細胞および線維芽細胞株に対する増殖阻止作用および殺細胞性等を比較検討した。
【方法】
Tabebuia属植物の樹皮またはカルスから、純メタノールおよびクロロホルムで抽出される(2(- 1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ディオン)成分NFDを得た。
樹立系ヒト癌細胞を96穴プレート上で24時間の前培養後、DMSOに溶解した2(- 1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ディオン(コントロールは0.05%DMSOのみ)を添加し、その後72時間の増殖曲線、50%増殖阻止濃度(IC50)および形態変化等を比較した。
【結果】
肺腺癌A549株、結腸腺癌WiDr株、腎細胞癌VMRC-RCW株細胞に対する72時間後のIC50値は、平均15ng/mlの付近にあった。気管上皮細胞、線維芽細胞N6KA株、腎細胞等の正常細胞に対するIC50値は、65~84ng/mlであった。2(-1-ヒドロキシエチル)5- -ヒドロキシナフト[23, -b]フラン-4,9-ディオンの濃度を高めると、細胞は増殖を阻止されるとともに、死に至った。癌細胞では、2(-1-ヒドロキシエチル)5- -ヒドロキシナフト[23, -b]フラン4- 9, -ディオンの濃度が20~35ng/ml付近で増殖が停止した。癌細胞に対するLD50値、確実致死量等は正常細胞より有意に低い値を示していた。
本実験結果から、2(-1-ヒドロキシエチル)5- -ヒドロキシナフト[23, -b]フラン4- 9, -ディオンがヒト癌細胞に対し、増殖阻止、細胞破壊を伴う、かなり選択的な毒性を有する可能性が示唆された。
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