日本生薬学会 第52回年会
ブラジル原産Tabebuia avellanedeaの抗腫瘍活性ナフトキノン類の合成研究■2005年9月16日~17日 石川県・金沢市
「Synthetic Studies on Antitumor Naphthoquinones Isolated from Brazilian Tabebuia avellanedae」
Akira Iida (Formerly, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University), Harukuni Tokuda and Hoyoku Nishino (Department of Biochemistry, Kyoto Prefectural University of Medicine)
【目的】
ノウゼンカズラ科Tabebuia avellanedea(Taheebo)は、ブラジルから北ア ルゼンチンまでの南アメリカを原産とする大木である。本植物は古代インカ の時代より知られた伝統的な民間薬であり、その樹皮は利尿薬や収斂薬 として利用されてきた。一方、本植物が、抗がん、抗真菌、抗菌、抗炎症等 の効果を示す医薬資源として着目されたことから成分研究が進み、ナフトキ ノン類、アントラキノン類、ベンゾフラン化合物およびベンゼン誘導体等が単 離された。中でも、(-)-5-hydroxy-2(- 1’-hydoxyethyl)naphtho[2,3- b]furan-4,9-dione (1)やその位置異性体である(±)-8-hydroxy-2(- 1’- hydoxyethyl)naphtho[2,3-b]furan-4,9-dione (2)は様々な腫瘍細胞に 対して強力な細胞毒性を示すこと、またキノン1は同時に強力ながん予防 効果をもつことが明らかになった。しかし、本植物におけるこれら有効成分 の極めて低い含有量と両成分の類似した物理化学的特性に由来する分 離の困難さは、さらなる活性特性を研究する上での障壁となった。
今回、5-hydroxy-1,4-naphthoquinone(juglone, 3)を出発原料とする キノン1の化学合成に成功した。本合成法は、キノン1のみならず、キノン2 や他の類似するキノン類の合成にも応用が可能である。
【実験と結果】
Juglone( 3)をジメチルアミンで処理して得たアミノ体を酸加水分解し、2- hydroxyjuglone (4)を得た。キノン4をHagiwara*らの方法を用いてヒドロ フラン化し、ケトン体5とそのジヒドロ体を得た。ジヒドロ体はMnO2で酸化して ケトン体5に変換した。さらに、ケトン体5をNaBH4で還元することにより、目的 とするキノン1をラセミ体として得た。このラセミ体は光学活性カラムを用いて HPLCで分離することにより、天然型のキノン1とそのエナンチオマーを得た。
今回、この両エナンチオマーおよび合成中間体の細胞毒性とがん予防効 果ついても併せて報告する。