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第12回 日本補完代替医療学会学術集会④

第12回 日本補完代替医療学会学術集会④

ブラジル産薬用植物由来タヒボの健康維持に向けての活用
■2009年11月21日~23日 和歌山県・伊都郡高野町
「Application of Brazilian medicinal plant, TAHEEBO against healthy support」
Harukuni Tokuda (Kanazawa University , Graduate School of Medical Science), Mitsuaki Yamashita and Masafumi Kaneko (Faculty of Pharmacy, Takasaki University of Health and Welfare) , Bacowsky Helmut (Zentrum Nosomi Clinic), Akira Iida (Faculty of Agriculture, Kinki University)
Ⅰ はじめに
 今回紹介する学名Tabebuia avellanedea、タベブイア・アベラネダエ(TA と略す)、一般使用名、タヒボはノウゼンカズラ科に属する植物で南米、ブラジ ル北部からアルゼンチン北部までいわゆるアマゾン地域のみに植生する樹高 20~30mにもなる大木で、その幹は水にも沈むほど堅牢な樹木として知られ ている。この樹木の内部樹皮、わずか表面5mmの極微小な部分は遠くインカ 帝国時代より種々の疾患に効能があると、いわゆる伝承薬用植物として用い られ、現在までその有益性の研究がより詳細に続けられている。私達は約20 年近く前より、とくにがんを対象に効能試験を続けてきており、発がん抑制物質 としてナフトキノン系化合物NQ801をこの植物より特定して報告した。わが国 でもその後、一般に飲料茶の形態で提供し、多くの方々に摂取されている。こ の天然物は世界中で研究されていたが、一昨年よりその含有成分でナフトキ ノン系のベーターラパチョがすでに米国での臨床試験で、がん疾患に対して フェーズⅡまで進んでいる事や、その成分が大手製薬会社で大量合成された ことも明らかになっている。その成果は現時点では治療が困難とされるすい臓 がん等に対して静脈投与試験を行なっている模様であり、抗がん剤としての 開発を目指しているものと推測される。
 以上の知見を基にして、われわれは従来のTAにくらべ、より機能性を高める 目的で、これまで実際に市販され、試験に用いていた製品であるTAHEEBO NFD ESSENCE(以下タヒボエッセンス)(タヒボジャパン社)に、NQ801を必要 量含有する粗抽出分画を新たに加えた形の、いわゆるデザイナーフードの形 態としたX6(バイシックス)(タヒボジャパン社)とよぶ製品を作製した。さらに生 理活性がベーターラパチョより強い化合物であるNQ801の化学合成にも成功 した。今回はこのようにしてできた食品とがんに関する試験結果を報告する。
Ⅱ 新しい食品素材バイシックスのがん細胞への作用
 今回は、とくに肺がん、乳がんに注目して、ヒト由来肺がん細胞であるA549、 ならびに同様の乳がん細胞MCF-7を用いて、バイシックスの抗増殖能を試験 した。シャーレにそれぞれ細胞培養を行い、完全に付着した状態で基礎培地 1mlとして被験化合物を加え、3日間反応後、特異的なトリパンブルーにて染色、 その生存細胞を計測し、その形態に関しても観察をおこなった。それぞれ3回 の試験を行ったが、これまでのタヒボエッセンスと比較して約数倍の細胞増殖 抑制効果を示した。形態面においても、通常の繊維芽細胞様から明らかな円 状構造を示し、その割合はバイシックスの方が多く、また高濃度の状態でより多 い傾向が認められたことから、がん細胞に対して、高感受性であることが示唆 された。さらにこの形態は通常の抗腫瘍剤の作用である殺細胞作用とは異な り、細胞分裂の抑制であることから、細胞休止期の維持の状態であると推測し、 このような環境では実際の生体内での影響はこの化合物による作用としては 軽度の関与であると思われ、その意味でも有用ながん予防作用と考えている。
また活性化合物であるNQ801は既存の5FUや同様なナフトキノン系のマイト マイシンCと比較してこれらヒト由来がん細胞に対する試験において、その殺 細胞能は弱いが、顕著な細胞毒性を認めない有用活性物質として、またその 応用が米国でのベーターラパチョと同様に期待できるものと考えている。
Ⅲ バイシックスによる小動物試験の成果
 細胞試験において有用な作用が評価できたことから、小動物、マウスを 用いた発がん抑制試験を行った。世界的に認められた、発がん作用抑制 試験として、簡便かつ明確なデーターが得られるマウス皮膚二段階発が ん抑制試験を行なった。SENCARマウスの背部を剃毛し、1日後、その部 位に発がんイニシエーションとしてDMBAのアセトン溶液を塗布、その1週 間後に発がんプロモーターとして同部位にTPAを塗布する試験系で、発 がんプロモーター処理の1時間前にTPA量の50倍のタヒボエッセンス、バイ シックス、NQ801を塗布し、溶剤であるアセトンのみを塗布する陽性コント ロールと比較することで評価を行う。それぞれ腫瘍の発生率、発生数で データーを整理すると、抑制物質を無処理の系と比較して、バイシックスは タヒボエッセンスよりも発生数において、抑制効果を示し、NQ801については、 発生率に関しても抑制を示した。また腫瘍の発生時において遅延効果が 認められ、腫瘍の形態においても腫瘍径が減少する傾向を示した。このよ うな実験系で遅延作用が認められた事実はヒトにおいて、少なくとも数年間、 がん発症の危険性を軽減できるものと考えられる。また腫瘍径においても 処理した群は、縮小傾向を示し、これらは非特異的免疫効果の上昇が推 測され、ここで示された種々の所見は、このものが発がん誘導抑制に対して、 意義を有するものと考えている。
Ⅳ 開発と臨床的意義への評価
 現時点ではこのような結果から、タヒボエッセンスは一般的な健康志向と しての働きのために、バイシックスは、がんの化学予防もしくはがんを対象と して考えており、とくに今回は、バイシックスの臨床試験結果についてもその 一部について言及する。
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